25番 津照寺 ―舵取りの意味―
2009年11月30日 20:02
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津照寺は、地元の人からは、通称、津寺と呼ばれている。
山門をくぐると、いきなり、険しい石段が、目の前に立ちはだかる。
一段一段が、ちょっと斜めになっているので、
足を踏み外さないよう、おそるおそる、あがっていく。
このお寺の見所は、
海上の安全を守るといわれている、地蔵菩薩だ。
昔、土佐の武将、山内一豊が、嵐によって遭難しかけた。
そのとき、どこからかお坊さんが出現して、
彼の導きで、無事、室戸港に到着することができた。
そこで、この津照寺にお礼参りにきたところ、
境内のお地蔵さんが、なぜか、ずぶぬれになっていたそうだ。
一豊は、あのとき出現したお坊さんは、
このお地蔵さんだったんだと思い、
それからというもの、海上安全の守護神として、
このお地蔵さんを祀ることにして、今日に至る、というわけだ。
別名、「舵取り地蔵」。
現在では、海上安全だけではなく、
家庭円満のご利益もあるといわれているそうだ。
旦那さまの舵取り、家庭の舵取りをする、
という意味から来ているのだろう。
ただのギャグのようにも思えるけれど、
言葉をつないで、新しい意味をつくっていく営みは、
土地の歴史を、ますます豊かにしていく。
そうして造り上げられたのが、
この、八十八ヵ所のお寺たちなのだ。
言葉や心持ちの力の強さを思う。
木の幹の冷えたる朝や楽もなく 紗希