35番 清滝寺 ―水の旨さ、闇の怖さ―
2009年12月20日 13:40
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清滝寺は、その名の通り、霊水の有名なお寺だ。
これまでにまわってきた中にも、
霊水と呼ばれる井戸や湧き水を持つお寺は、いくつもあった。
そのことは、私たちにとって、
水というものがいかに大切かということを、物語っている。
「今はね、水道の蛇口をひねれば、
水が永遠に出るみたいな気がするでしょ。
でも、昔はそうやなかったんやからねえ」と、長野さん。
確かに、蛇口から供給される水は、
どこから来てどこへ行くものなのか、
はっきりとは分からない。
けれど、こうしたお寺でいただく水というのは、
今目の前に湧き出ている。
水を、体の中に通すという実感がある。
水という、今では当たり前に身近にあるものの、
本来の姿を知るためにも、
こうしたお寺でお水をいただいてみるのは、
とてもよいことだと感じた。
もうひとつ、このお寺では、
薬師如来像の胎内くぐりをすることができる。
話では、胎内めぐりを導入した、四国ではじめてのお寺らしい。
三代前の住職さんが、苦労してつくられたのだという。
先見の明とはこのことなのだろう。
階段をあがって、まっくらなお堂の中へ。
階段は、全部で八十八段あるという。
一段一段、ご真言を唱えながら進んでゆくと、
煩悩が落ちていくといわれている。
中盤は、本当に何も見えないので、闇の怖さを知ることができる。
ぼんやりと明るくなってきて、外へ出られたときの開放感といったら。
からだを押し付けていた闇の力が、一気に離れて、
とても軽くなったような感じがした。
くらがりの壁に触れたる冷たさよ 紗希
(神野紗希 記)