61番 香園寺 ―子どもの成長を願うこと―
香園寺は、伊予の子安大師さまとして、人々に親しまれている。
昔、このあたりをお大師さまがとおりかかると、
難産の女性が苦しんでいた。
お大師さまがその人を助けてあげて、
無事元気な子どもが生まれたことから、
安産祈願のお寺として、現在まで続いているのだという。
宿坊の廊下には、何千枚もの子どもの写真が飾ってある。
このお寺で、安産の祈願をして、無事に生まれた子どもたちだ。
お礼参りの際に、安産お守りをお寺に返し、
一緒に写真を奉納する。
そうすると、一年間は本堂で祈祷をし、
十年間は宿坊に飾り、そのあとは、本堂の中に保存して、
ずっと祈祷をしてくださるのだとか。
写真というのは、
身代わりや分身のような役割も果たすから、
その写真をお寺に守ってもらっているということは、
強い安心感につながるだろう。
お守りには、寝室に貼るお札や、
夫婦がそれぞれ持ち歩くための、
五センチくらいの小さなお札、
それから生まれた子どもの成長を
祈願するお札などが売られていた。
境内にも、家族連れがたくさんいた。
ここでご祈祷をして生まれた子どもだろうか。
とてとてと走って、こけて泣いている姿も、
元気そのもので、他人事ながら、嬉しくなった。
もうひとつ付け足しておくと、このお寺の本堂は、
一風変わったモダンな建築だ。
ぱっとみて、まずお寺だと思う人はいないのではないだろうか。
この本堂では、たくさんの人が、
中でご祈祷を受けられるようになっている。
受け皿が大きいということで、ここにも、
衆生みなを救いたいという仏教の気分がある。
毬遊びする子に秋日差しにけり 紗希
(神野紗希 記)