65番 三角寺 ―誠実な挨拶―
2010年3月31日 19:23
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三角寺は、愛媛県で、最後の札所だ。
三角寺の名前の由来は、お大師さまが、
この地で三角の護摩壇を築いたことにある。
護摩壇とは、仏教の修行のひとつ、
護摩を焚くお堂のことだ。
三角寺では、まず、重さ150貫はあるという、
山門の梵鐘が迎えてくれる。
長野さんがついてくれた鐘の音は、
下から歩いてのぼってくる私たちの芯にまで、ぐわんと響いた。
境内には、桜の大樹があった。
枝は、大師堂のほうへぐぐっと伸びており、
その枝が自らの重みで折れないようにするための、
支え棒がいくつも立っていた。
まるで、おじいさんが、杖をついて、
一生懸命、ふんばって立っているようだった。
この桜は、俳人の小林一茶ゆかりのものだという。
隣には、一茶の「是でこそ登かひあり山桜」の句碑が、
寄り添うようにたっていた。
本当に、そのまんまのことを詠んだ、かざりっけのない俳句だ。
しかし、このお寺に到達したよろこびを、
挨拶をする気持ちで俳句をつくるとき、
技巧や美よりも、こうした率直さこそが
誠実さにつながるのかもしれないと思った。
翅破けたる秋蝶の呼吸かな 紗希
(神野紗希 記)