77番 道隆寺 ―目治し薬師とラッキーセブン―
2010年4月30日 19:41
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道隆寺は、通称、目治し薬師さんと呼ばれている。
眼病一般に、ご利益があるとされているのだ。
納経所には、眼病平癒祈願のお札があった。
これが、一風変わっている。
ただ、お札を買って、部屋に飾るだけではないのだ。
お札を入れた袋の中には、ほかに、
一枚の用紙と、返信用封筒が入っている。
この用紙には、升目があって、
自分の年の数だけ、平仮名の「め」を書いて升目を埋めていく。
書き終わったら、それを道隆寺宛の返信用封筒に入れて、
切手を貼って、ポストに投函する。
そうすれば、住職がご祈祷して、
「め」を書いた用紙を奉納してくれるのだという。
実は、私の祖母は、数年前から、目を悪くして、
これまでに二度、手術をしている。
視力が落ちて、ものがよく見えないのだ。
「新聞も読めん。テレビも見れん。つまらん。」といっては、
寂聴さんの法話のテープを繰り返し聞いている。
あんまり聞きすぎて、擦り切れてしまったほどだ。
その祖母に、このお札をいただいて帰ることにした。
もちろん、治るか治らないかは、分からない。
でも、普通のお札よりも、
自分で「め」の字を書くということをする分、
ご利益が大きい気がする。
それに、札所は、ラッキーセブンの77番。いい数字だ。
祖母は、持ち帰ったその日に、升目を埋めて、
近くのローソンにあるポストに、投函しにいった。
「年の数だけ言うけん、数えながら埋めていったら、
もう76歳やわい。そりゃ目も見えんなるわいねぇ」と、
祖母は、いつもの、満面の笑顔を見せてくれた。
新聞を読む祖母遠し牽牛花 紗希
(神野紗希 記)