86番 志度寺 ―悲恋物語―
2010年5月11日 19:50
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これは、不比等と恋に落ちた海女の墓だ。
志度寺には海女の玉取り物語という悲恋の伝説がある。
不比等と恋に落ちた海女は、
竜神に奪われた不比等の玉を代わりに探しに、
海へ深く深く潜っていった。
やがて浮かび上がった海女は、全身傷だらけ。
それでも、乳房の下にその玉を大切にしまってあったそうだ。
愛する人に命がけで尽くす海女の話は、
謡曲の舞台ともなり語り継がれている。
この海女の玉取り物語をイメージして作られた枯山水「無染庭」。
竜神が玉を隠し、海女が玉を乳下に隠したという話に基づいて、
全部の石を一度に見渡すことはできず、
見る場所によって、石が隠れるようになっている。
石が寄り添うように立っている様は、
海女の不比等や子を思う気持のようだ。
さまざまな場所から、いつ見ても新たな感動がある不思議な庭である。
このお寺には、老人保健施設も併設されている。
海女の愛は、ここでも息づいているのだろう。
呼ぶための口笛強し青芒 る理
(野口る理 記)