81番 白峯寺 ―交差点としての札所―
2010年5月 9日 20:05
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81番札所、白峯寺。
もはや、残すところ、あと8つのお寺となった。
さみしいような、先を急ぎたいような、複雑な心地だ。
白峯寺は、五色台の高台にある。
五色台とは、高松の郊外に位置する山々で、
青峰・赤峰・黄峰・白峰・黒峰の五つの山からなっている。
この白峯寺は、名前の通り、白峰山に建っているのだ。
車は、山道を、どんどん上がっていく。
車窓には、高松の景色が、瀬戸内の海とともに、
ひろびろと広がっている。
お遍路は、88のお寺を詣でるだけでなく、
寺と寺をつなぐ景色を味わうものでもあるのだろう。
寺には、西行の石碑や、崇徳上皇にまつわる玉章の木、
干支の守り本尊など、見るべきものも多い。
白峯寺の境内には、無人で、いちじくも売られていた。
1パック200円。地域の方が置いているのだろう。
東京のスーパーで目にするものよりも、
おおぶりで、張りもあり、そして安い。
季節が違えば、ここにみかんが並ぶのかもしれない。
こうした光景は、これまでのお寺でもいくつも見てきた。
つまり、遍路の札所になっているお寺は、
お遍路さんだけのものでなく、
その地域の人々の生活にも、密着している場所なのだ。
八十八ヵ所のお寺を通じて、
やってくるお遍路さんと、住み続ける地元の人間が接する。
札所は、交差点のようなものだと思った。
黒揚羽つくたびに鳴る杖の鈴 紗希
(神野紗希 記)