1番 霊山寺―鈴の音―
霊山寺は、「一番さん」の名で親しまれている、発願のお寺だ。
門にも「発心」の文字が。
発心という言葉は、心の底から何かが沸いてくるような手触りだ。
一番目のお寺なので、長野さんに、
参拝の仕方を、ひととおり丁寧に教えていただく。
たとえば、山門をくぐるときには、
行きも帰りも、心を込めて一礼をすること。
あとから来た人が手を焼かないように、
蝋燭は奥の高いところから、お線香は中心からあげること。
納経のご朱印をいただくのは、読経を奉納しましたという証明だから、
必ず、納経の前に読経をあげること。
読経は、本堂→大師堂の順に行うこと。
形式は、心持ちを表すためのものだから、
心をこめてやることが一番大切なんだよ、と長野さん。
しかし、このやり方も、長い長いお遍路さんの歴史の中で、
みんながまわりやすいようにできあがったものなので、
知っておくことは大切なことです、とも言っていた。
一番札所だけあって、見所は、
境内に遍路用品を売るお店があることだ。
納札や納経帳、蝋燭や線香、経本や金剛杖など、
お遍路に必要なさまざまな道具が売っていた。
中でも、特に心ひかれたのが、
「自鈴」と呼ばれる、魔よけの鈴だ。
昔は熊よけの意味もあったそうだ。
腰にゆわえつけるための紐が、カラフルで、
かわいらしいところが気に入ったので、
道中つけて歩くことに決め、購入することに。
カバンにつけた鈴が、ちりん、ちりんと頷くように鳴るたびに、
自然と景色が澄んで見えてくる気がする。
ずっと、この音とともに旅をするんだな、と思うと、
何か心強い感じがするのは、一番札所の力を、
もうすでにいただいているからなのか。
かなかなや点きしばかりの燭の丈 紗希
(神野紗希 記)