87番 長尾寺 ―あとひとつ、まだひとつ―
2010年5月24日 18:57
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ここには、源義経の妻、静御前の剃髪塚がある。
頼朝に追われて都落ちした義経を追って、
静御前は、はるばる、この讃岐は長尾寺までやってきた。
しかし、ついに、義経に会うことはかなわなかった。
見つからなかったのだ。
静御前は、ここで剃髪をし、その髪を、塚に弔った。
観音像のそばにひっそりとある剃髪塚は、本当に小さかった。
その小ささに、彼女の心細さを思った。
残すところ、あと札所も2つとなった。
タクシーで回ったとはいえ、これだけの感慨があるのだから、
歩きでお遍路している方は、どんなにか、
「87番札所」という木札の数字が、まぶしく見えることだろう。
お寺で会う自家用車のお遍路さん、
タクシーで追い越す歩きのお遍路さん、
自転車のペダルを強く漕ぐお遍路さん。
さまざまな形で、お遍路をする人たち。
それぞれの思いが、この長尾寺で、満潮に達しようとしている。
その、見えないエネルギーの高潮を、青空の下で、感じ取っていた。
太陽に翼が透けて鷹渡る 紗希