私のお遍路体験記 ~八十八ヶ寺と奏でる私の詩~

3番 金泉寺 ―泉の映す顔―

2009年10月18日 17:00 記事一覧に戻る

 

IMG_1111.JPG

 

八十八ヵ所のお寺の名前には、それぞれ意味がある

たとえば「焼山寺」は、大蛇が火を吐いて山を焼いた伝説から、

「仏木寺」は、お大師さまが楠から仏を掘り出した逸話から、

その名がつけられているのだ。 

この「金泉寺」は、水不足で悩む住民の声を聞き、

お大師さまがその杖で井戸を掘ったところ、

みごと霊水が湧き出たという伝説に、その名の由来があるという。

 

ただの泉ではなく「金」と掲げるところが、

井戸水がどれほど嬉しいものであったかを物語っている。

 

 

IMG_1121.JPG

 

この泉を覗き込んで、水面に顔が映ると、

長生きをするといわれている(映らないと、短命なのだとか)。

そこで、さっそく、二人で、覗き込んでみた。

映画「ローマの休日」で、グレゴリーペックとアンが、

真実の口に手を入れるときの、そんな心境...。

 

 

IMG_1120.JPG

 

 

IMG_1119.JPG 

 

...どうやら、短命という運命をつきつけられることはなかったようだ。

 

ただの水鏡だと思ってしまえばそこまでだけれど、

顔が映りこむことに長命のしるしをみるという

前向きな考え方に、私は賛成したい。

 

このように、心の持ちようで世界はどのようにも変わるということは、

もしかしたら八十八ヵ所めぐりの教えてくれる、

ひとつの大きな真理なのかもしれない。

 

 

帰り際、山門のすぐ手前に、

石と石の隙間から生えている草を見つけた。

 

IMG_1137.JPG

 

こんな狭い隙間にも、命がたしかに根を張っていることの心強さ。

この草も、金泉寺の水の力で、強くなれたのかもしれない。

 

見えざりき泉の映す表情は  紗希

 

                     (神野紗希 記)