私のお遍路体験記 ~八十八ヶ寺と奏でる私の詩~

19番 立江寺 ―黒髪の恐怖―

2009年11月18日 09:54 記事一覧に戻る

 

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「このお寺の見所はねえ、なんといっても、黒髪堂かな」と長野さん。

 

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江戸時代の後期、お京という芸者がいた。

なんでも、とっても美人だったのだとか。

 

彼女は、島根の実家で結婚したが、別の男性と関係をもち、

その不倫相手と二人で夫を殺してしまった。

その後、四国遍路として身をかくしていた二人。

 

しかし、この立江寺にやってきたところ、

本尊の地蔵菩薩の前で、突然にお京の髪が逆立ち、

鐘の緒に髪が巻きついてしまった。

事情を話すと、頭の肉ごと、髪が削げ落ちて、

お京はなんとか助かったのだそうだ。

以後、お京は改心して、近くに住み、祈り続けて亡くなったという。

 

 

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小さなお堂のくらがりをのぞきこむと、

鐘の尾と、そこに巻きついている黒髪があった。

黒髪の量が思っていた以上に多く、

お京の痛みが伝わってくるようで、怖くもあった。

 

それに、まだ200年ほど前の話だから、

ちょっとなまなましくみえる。

苦手な方は、その晩、夢に見るかもしれない?ので、どうかご注意を。

 

けれど、その黒髪が確かにそこにあることで、

ともすれば伝説として信憑性を持ちにくい、

お寺にまつわる出来事を、これから、今まで以上に、

いつか現実に起きたこととして感じられるような気もした。

 

 

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そのエピソードから、この立江寺は、

「邪心を持っている人は入ることができない」、

阿波の関所寺として有名になったのだそうだ。

 

仏教についての知識がない私たち二人は

「邪心ってなんやろうね」

「清い心でなくても、とりあえず、邪心がなかったらいいんよね」

と、「邪心」について思いをめぐらせながら、境内を拝見した。

 

もし、邪心があったなら、きっと、まず瞳にあらわれるだろうな、

などと考えもした。

 

 

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山門を出ようとしたとき、

そばのベンチに座っていたお母さんから、声をかけられた。

 

「お接待させてください。

もしよかったら、もっていってくださいますか?」

 

こちらがいただく側なのに、とてもとても恐縮してしまった。

でも、お接待する側は、お遍路を回っている方から、

功徳を分けてもらうという意味もあるのだという。

私に、分けられる功徳などあるのかと、やはりためらわれたけれど、

お大師さまの功徳を信じて、ありがたく、

そのお接待をいただくことにした。

 

くださったのは、手縫いの小銭入れ巾着だった。

中には、間仕切りまで作ってあった。

巾着は、その方のてのひらの中にあったので、まだ少しあたたかかった。

 

 

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サイダーやプルタブ開けて供えらる  紗希

 

                     (神野紗希 記)