私のお遍路体験記 ~八十八ヶ寺と奏でる私の詩~

27番 神峯寺 ―霊水と呼ぶ気持ち―

2009年11月30日 20:19 記事一覧に戻る

 

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「ここから、ちょっと揺れるからねえ、気をつけてねえ」と、長野さん。

そこから、厳しい蛇行の道路が続く。

車にも、土地にも、慣れていないと、攻略できそうにない道だ。

前のお寺が海辺だったからか、

高いところへ登っていくという感じが強い。

 

「車用の道路は蛇行しとるけれどね、遍路道はね、

まっすぐの険しい道のりなんよ」。

 

江戸時代に書かれた『四国蠕ァ礼霊場記』には、

「幽径の九十九折が続き、黒髪も黄色くなってしまう」と、

その道のりの苦しさが記されている。

 

「でも、この道は、春になると、ずっと桜のトンネルになるんよ。

ほんとうにきれいなんよ」。

長野さんは、その景色を思い出しているように、

笑顔を浮かべて言った。

 

 

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神峯寺は、なんといっても、「神峯の水」という霊水が有名らしい。

 

バスツアーのお遍路さんの列に混じって、早速お水をいただいてみた。

石のくぼんだところに、水が勢いよく流れ出てくる。

汲んだひしゃくにくちびるをつけると、ひんやりとつめたい。

水しぶきが、顔に飛んでくるのも、涼しい。

 

 

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ずっと昔から、あの厳しい坂をあがってきたお遍路さんが、

この水を飲んでいたのだろう。

渇ききった喉を潤されたとき、

「霊水」と感謝したくなる気持ちが、分かる気がした。

 

 

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庭園も、美しく整えられていて、目を楽しませてくれるし、

坂をあがってくる途中には、

お参りをして脊椎カリエスが治った人を顕彰する碑がある。

山頂にある、大きなお寺という印象だった。

帰り道、同じ道路を蛇行して戻りながら、

春、桜のトンネルをまた見に来たいと思った。

 

 

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夏山に読経の声を置き去りに  紗希

 

                  (神野紗希 記)