45番 岩屋寺 ―岩を見上げるための道―
「明日は岩屋寺かあ。あそこは厳しいぞ。 ちゃんと歩ける格好でいくように。」 昨夜、父に電話すると、そう注意された。
長野さんも、
「ここばっかりは、車でのぼってあげれんけん。
片道、20分くらいかな。でも、そういうお寺も、
いくつかはあってもいいでしょ。」と言い、
駐車場そばの売店で、杖を貸してくれることを教えてくれた。
杖をつきながら、山道を、石段を、どんどん登っていく。
そろそろかな?と思っていたところにやってきたお遍路さん、
すれ違いざま、「まだまだこれからぞ、頑張って!」と一言。
ええっ?まだまだなの?そろそろ限界かも・・・。
こうして、長い道のりをのぼっていると、杖の大切さが身にしみる。
杖を地面につくことで、自然と力が入るし、
転びそうになることも少ない。
「転ばぬ先の杖」という言葉を、身をもって実感する。
もうすぐ到着というところに、橋があった。
これまでの道と同じように杖をつこうとすると、向かいから来た方に、
「橋の上で、杖はついてはいけないよ」と教えてもらった。
なんでも、お大師さまは、昔、橋の下で寝たことがあるのだという。
だから、お遍路さんの金剛杖は、橋を渡るときには、
ついてはいけないことになっているのだそうだ。
まだまだ、知らないことが、たくさんある。
お寺は、山のように巨大な岩にもぐりこむようにして建っている。
建物の屋根の途中は、岩があるので、途中できれてしまっている。
岩のせり出し具合は、写真だとなかなか伝わりにくいのだけれど、
実際にその下に立ってみると、その圧迫感は、まさに圧巻だ。
はしごを上っていくと、この岩の洞につく。
ここは、昔、お大師さまが修行をされたところだそうだ。
今は、願いをよくかなえてくれるお不動さんが祀られている。
ちょっと高いところだけれど、岩肌はひんやりして気持ちがいい。
見晴らしもいい。
帰り道は、バスツアーのお遍路さんがあがってくる途中だった。
「こんにちは」「おはようございます」と、
声を掛け合いながら、すれ違っていく。
お年を召した方も、若い方も、男性も女性も、
痩せた方も眼鏡の方も、本当にたくさんの人がいる。
みんな、なぜお遍路に来ているのだろう。
そんな疑問がよぎりながらも、「こんにちは」の声のあかるさに、
こちらが元気付けられていく。
バス遍路にぎやか百合を嗅ぎもして 紗希
(神野紗希 記)