51番 石手寺 ―信じる力―
ここは、お遍路さんの祖、衛門三郎ゆかりの地だ。
衛門三郎は、松山の大地主で、とても強欲な人だった。
そこで、托鉢僧に姿を変えたお大師さまが、
七日間、三郎を訪ねたのだが、三郎は、ことごとく追い返した。
そこで、お大師さまの怒りをかって、
八人いた子どもが、次々と亡くなってしまった。
三郎は、お大師さまに許しを乞うため、
お大師さまを探して、四国のお寺を回るようになった。
その回数は、8年で、20回にも及んだという。
そしてついに、亡くなる直前、
お大師さまに会うことがかなった。
それで、許しをもらって、成仏した。
お遍路は、もともと、お大師さまを探す旅だったのだ。
この三郎は、亡くなるとき、お大師さまに、
生まれ変わったら人の役にたつ人間になりたいと願った。
そこで、お大師さまは、彼に石を渡して、
大事に持っておくようにといった。
その後、三郎の子孫の河野家に、男の子が生まれたが、
その子は、三歳になるまで、手を握ったままひらかなかった。
三歳のとき、無理やりひらいてみたら、
三郎がお大師さまにいただいた石が握られていたのだという。
その、男の子が握っていた「玉の石」が、
この石手寺には祀られている。
それで、お寺の名前も「石手寺」なのだそうだ。
他にも、石手寺には見所がたくさんある。
宝物殿にあるたくさんの文化財や、日本一の弘法大師像、
曼荼羅洞窟や、八十八ヵ所のお砂撫でめぐりなど、
ゆっくり見ていると、時間が足りない。
参拝数も、八十八ヵ所で、一番多いのだそうだ。
「今は、何かあったら救急車ですけどね。
困ったときは、石手寺と、
まだ思ってくださる方がいらっしゃるんです。
信じる力が、まだ生きているお寺なんです」と住職さん。
信じる力。私には、あるだろうか。
蝶死して模様くまなく見ゆるなり 紗希