私のお遍路体験記 ~八十八ヶ寺と奏でる私の詩~

57番 栄福寺 ―長寿を呼ぶパワー―

2010年3月19日 21:01 記事一覧に戻る

 

変換 ~ IMG_2164.jpg 57ばん

 

栄福寺には、「おかげ話」がある。

 

おかげ話とは、こういうことをしたおかげで、

このようにご利益があったという、伝え話のことだ。

そんなに昔の出来事ではなく、

明治や昭和になってからのことが多いという。

 

 

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このお寺に、あるとき、足の不自由な男の人が、お参りにきた。

歩けないので、小さな籠に、車輪をつけて、

犬にひかせてやってきたらしい。

 

お寺についたとき、犬は、

きっとのどがかわいていたのだろう、

水のあるところへ、一目散に走った。

それで、男の人は、籠から落ちて、こけてしまった。

ところが、転んだはずみで、

なんと歩けるようになったのだという。

 昭和8年の出来事だ。

 

当時、男の人は、まだ十五歳くらいの少年だったというから、

もしかしたら、まだどこかでお元気でいらっしゃるかもしれない。

 

 

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そのときに乗ってきた籠が、本堂の左側に祀られている。

目の前に、確かに籠が存在することが、

おかげ話のなまなましさを強めている。

 

 

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また、栄福寺には、長寿お守り手拭というものもある。

 

昔から、八十八歳の米寿の人のものを持つと、

長生きするといわれているらしく、

この手拭の絵を描いたのが八十八歳の人だったことから、

この手ぬぐいが、長寿のお守りになったそうだ。

 文字が読めない人のために、般若心経を、

わかりやすく絵で説明してくれている。

 

はじめは、釜を逆にして、「まか」。

「はんにゃ」ははんにゃのお面、「はら」は太ったおなか。

字が読めないことを、ユーモアでもって超えていく。

そのプラスのパワーが、長寿につながっていくのだろう。 

 

 

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こかげひなたこかげひなたと秋の蝶  紗希

 

                       (神野紗希 記)