59番 国分寺 ―薬つぼと握手大師―
八十八ヵ所、三つ目の国分寺。愛媛県、今治市にある。
今治は、タオルの生産日本一の町だ。
日常的に使えるタオルから、贈答用の高級タオルまで、
さまざまなタオルが、生産・販売されている。
近隣のタオル美術館では、
アウトレットの商品も買うことができるからお得だ。
私も、松山市にある実家から遠くないので、
昔から何度か足を運んでいる。
やわらかく、肌触りのよいタオルは、
毎日を、すこしだけ、良いものにしてくれる。
このお寺には、天然記念物の、とうつばきがある。
つばきのシーズンではなかったので、
花を見ることはできなかったが、
椿の葉が、曇りの日の鈍い日差しに照って、
ぎらりと光っていたのが印象的だった。
境内には、薬師如来の薬つぼと、握手修行大師がある。
ここのご本尊は薬師如来なのだが、その薬つぼが、
石で模されて置かれてある。
その石の胴の部分には、
頭、足、腰、手、肩、首、耳、目の、
八つの漢字が彫られており、
自分が治したいと思っている箇所の文字をさすりながら、
ご真言を一回唱えると、よくなるのだという。
私は、肩こりがひどいので、「肩」の文字をさすりながら、
薬師如来のご真言である、
「おんころころ せんだぎ まとうぎそわか」を唱えた。
ご真言は、覚えていなくても、
石に彫ってくれているので、安心である。
もうひとつの握手修行大師は、
手を差し出しているお大師様の石像だ。
この石像と握手しながら、願いごとを一つだけ思うと、
それがかなうのだという。
「何を願ったの?」と聞くと、「内緒です」と答えたる理ちゃん。
人に告げないほうが、願いが深くなるのだろう。
てのひらのくぼみ団栗乗るくぼみ 紗希