私のお遍路体験記 ~八十八ヶ寺と奏でる私の詩~

67番 大興寺 ―ようお参りです―

2010年4月14日 17:33 記事一覧に戻る

 

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境内に入ると、まず、かたちのよい松が目に入る。

近づいてみると、札が下がっている。三鈷の松だ。 

 

 

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三鈷の松の「三鈷」とは、仏具の名前だ。

お大師さまが、唐での修行を終えて、

この三鈷を、日本に向かって投げた。

すると、帰国してから、高野山の松の木に、

引っかかっているのが見つかった。

それで、お大師さまは、高野山を聖地とすることに決めたという。

 

普通、松葉は、二本で一対だが、

この松は、三本で一対になっている。

 

 

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木の下には、箱がおいてあって、松の落ち葉が入れられていた。

お守りになるので、ぜひ持ち帰ってくださいとのことだ。

私も、一組、いただいて帰った。

長野さんからは、

「大きいものは、持ち歩きにくいから、

小さいものを選ぶといいよ」とアドバイス。

 

 

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もうひとつ。大興寺には、七日燈明がある。

 

 

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直径5センチほどある赤い蝋燭に、

願い事を書いて、奉納する。

すると、燃え終わるまでの七日間、

本堂で燃やし続けてくれるのだ。

このお寺の本尊は、薬師如来さまなので、

特に健康に関するお願いが多いという。

 

本堂の中には、いろいろな丈の赤い蝋燭が、

それぞれの炎を燃やし続けていた。

燃やし始めた日が違うので、

おのずと丈がまちまちになる。

これらの蝋燭の丈が、そのまま祈りの丈だと思った。

 

健康というと、父が定期検査でひっかかっていたことを思い出した。

まあ大事はないだろうと思いつつ、

「父の体に何もありませんように」

といった内容を書いて、奉納した。

これだけで、気持ちがずいぶんと軽くなったのだから、

気がつかないところで、心配は募っていたということなのだろう。

 

 

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石段を下る途中、境内の木々に

ホースで水を撒いているおじいさんがいた。

こんにちはと声をかけると、

「こんにちは、ようお参りです」と言ってくれた。

「ようお参りです」は、

お遍路さんへかける独特の挨拶のひとつなのだろう、

これまでも、何度かそう声をかけられた。

 

やさしい言葉だ。

疲れているお遍路さんを、言葉がいたわってくれる。

 

 

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木に触れててのひら厚し初嵐  紗希

 

                             (神野紗希 記)